手術前の食事と服薬の注意
手術を控えると、何より「当日、ちゃんと手術を受けられるのだろうか」という不安が先に立つものです。その不安を少しでも減らすために、手術前に知っておきたい食事と服薬のルールをご紹介します。「うっかり食べてしまった」「朝の薬を飲んでしまった」という事態を防ぐためにも、この機会にご家庭で確認しておいてください。
食事の基本ルール:何時までに何を食べてよいか
手術中は麻酔を使うため、胃の中に食べ物や水分が残っていると、麻酔中に吐しゃ物が気管に入る「誤嚥(ごえん)」という事故を起こす危険があります。そのため、手術前には一定時間の絶食(食事をとらないこと)が必要です。
一般的な目安として、以下のように考えておくと分かりやすいでしょう。
- 手術前日の夕食までは、普通の食事をとって問題ありません。
- 手術前日の夜(おおむね午後9時まで)を目安に、それ以降の食事は避けます。
- 手術当日の朝は、朝食を食べずに来院してください。飲み物についても、手術当日の早朝以降は「水」以外は控えるのが原則です。お茶やコーヒー、ジュースなどは、胃に負担をかけるだけでなく、麻酔の妨げになることがあります。
この時間帯はあくまで標準的なもので、手術の内容や開始時間、年齢によって細かく変わります。入院案内の用紙に個別の指示が書かれているはずですので、そちらを最優先にしてください。「これくらいなら大丈夫だろう」と自己判断せず、指示が曖昧な場合は遠慮なく病院へ問い合わせましょう。
常用しているお薬の扱い:勝手に止めない、勝手に飲み続けない
日常的に血圧の薬や糖尿病の薬を飲んでいる方にとって、手術前の服薬はややこしいものです。ここで大切なのは、「すべての薬を一律に止める」わけではないということです。
- 手術当日の朝に飲むべき薬と控えていただく薬があります。
- たとえば、血圧の薬や甲状腺の薬は、朝の服薬を続けたほうが安全な場合があります。一方で、血をサラサラにする薬(抗凝固薬)や糖尿病の薬は、手術の内容によっては休薬が必要です。
- 漢方薬やサプリメントも、思わぬ形で麻酔や止血に影響することがあります。手術前に飲んでいるものは、すべて医師・看護師に伝えてください。
よくあるのが、「いつもの薬を飲み忘れてはいけない」と、朝の薬をうっかり飲んでしまうケースです。特に糖尿病の薬や抗凝固薬を飲んでいる方は、判断に迷ったら「何も飲まずに」来院し、当日の問診で申し出てください。自己判断で「今日はやめておこう」と勝手に休むのも危険です。体調が大きく崩れることがあります。
朝の服薬について迷ったら:「一覧表」を活用する
手術が決まったら、今服用しているお薬をリストアップし、病院の指示と照らし合わせるクセをつけておくと安心です。
- 現在飲んでいる薬の名前、量、服用時間を書き出しましょう。
- 手術前に「この薬はどうしますか?」と確認したら、その指示を一覧表の横にメモしておきます。
- 当日の朝は、そのメモを見て「飲む薬」「飲まない薬」をひと目で分かるようにしておきましょう。
この習慣は手術当日だけでなく、退院後の服薬管理にも役立ちます。家族が付き添う場合も、この一覧表があれば「朝の薬は飲んだの?」といった会話がスムーズです。記憶や思い込みに頼らず、紙に残すことが何よりの安全策です。
食事・服薬の注意は「当日ではない」ところが落とし穴
手術前日の夜にいつも通り夕食を食べ、その後に「明日の手術に備えて栄養をつけておこう」と夜食をとってしまう方がいます。また、就寝前にコップ一杯の牛乳を飲むのも、思った以上に胃に残ります。
手術前日の過ごし方で意識したいのは、「前日の夜から当日の朝まで、いつもより控えめに」ということです。前日まで食事を楽しむのは構いませんが、就寝直前の飲食は避け、当日は指示された時刻からは水以外を口にしないようにしてください。たとえ少量のお茶や飴玉でも、胃の中に内容物が残る原因になります。
もし朝にうっかり食事をしてしまった場合は、絶対に黙っていず、受付で申し出てください。予定通りに手術ができないこともありますが、それが安全のための判断です。誰かを責める話ではなく、医療者側も「飲んでしまった」「食べてしまった」という報告があれば、最適な対応を考えてくれます。
手術前の食事と服薬は、ルールさえ守れば難しいことはありません。分からないことがあれば、外来や看護師に何度でも確認してください。当日の準備をしっかり整え、安心して手術当日を迎えてください。